ストーリー

第10話 渓谷での遭遇戦

 一行は美しい渓谷を川沿いに歩いていた。

 ステイシアの砂漠地帯からモンマルトル寺院に行くには山を2つ越える必要がある。

 この辺りは雨量が多いため、川には豊かな水量が流れている。

「あーおいしい!疲れが吹っ飛ぶよね」

 川の水を飲んだジャンが満足そうに言う。

「飲みすぎてお腹が痛いとか言わないでよ?前もあったよね」

 リーベルがおどける。

「仲間と一緒の旅は楽しいでちゅ」

 嬉しそうに笑うくっぴー。

 そんなやり取りを見てクールなスナイデルも少し笑ったように見えた。

 なんとか「知の聖石」を手に入れたリーベルとジャン。残りは「力の聖石」だ。

 モンマルトル寺院に行く必要があるが、行き道はわからなかった。

 そこでスナイデルだ。

 スナイデルはなんとモンマルトル寺院で生活しており、今から帰るというではないか。

 なんと言うか・・・渡りに船というやつだ。

 すっかり仲良くなったくっぴーも一緒に4人(3人+1体)でモンマルトル寺院に向かっているのである。

「でもあの時はほんっと、もうダメだと思ったよ。だってあんなことある?」

 ジャンがピラミッドでの出来事を指して言った。

 逃げ場もない石畳のステージでのモンスター軍団との戦闘。

 これが『圧倒的な地獄』だった。

 モンスターの力を存分に発揮できる広い空間が用意されていた。

 ロドリゲスが「圧倒的な地獄から生きて帰った者はいない」と言っていたのもうなずける。

 ジャンとくっぴーもそう思った。しかし嬉しい誤算が「スナイデルの存在」だった。

 扉からあふれるように出てくる巨大なモンスターたちを文字通り無双していく。

 盗賊のアジトで見た剣技だ。踊るように剣を振るう姿は美しくすらあった。

 ジャンはハヤブサの弓で効果的にけん制はしたものの、実際にモンスターを倒したのはスナイデルだった。

 ただ、いくらスナイデルが強いといっても敵の数が数である。相当な時間がかかってしまった。

『圧倒的な地獄』のモンスターたちを全滅させ、ロドリゲスとリーベルが通った扉に近づいた時、

 ゴゴゴゴゴゴ・・・

 扉が開いた。そこに立っていたのはボロボロになったリーベルだった。

 ジャンとくっぴー、そしてスナイデルが無事であることを確認して気が抜けたのか

「みんな・・・よかった・・・」

 と言った後、気を失ってしまった。

 リーベルの回復を待った後、ステイシアの町へ行って当面の危機が去ったことを報告した。

 その時の情景ときたら・・・。まるで「英雄の凱旋」だった。

 ステイシアの町では女性と子供を安全な場所に避難させた上で、要所を閉鎖し男性が守りを固めていた。

 遠目から見ても守りがしっかりしている。

 きっとジェフが先頭に立ち、町の人たちと協力して短時間でここまで作り上げたのだろう。

 門番が見えるくらいの場所になったので剣を掲げ、事前に決めていた作戦成功の合図を送った。

 しばらくしても何の反応もない。

「あれ?どうしたのかな?門番の人、合図を忘れちゃったのかな?」

 もう一度合図を送る。・・・反応がない。

「仕方ない。門番の人と話をしよう」

 リーベルが言ったとき、

 ゴゴォオーン。

 街の門が開いた。そして・・・

「リーベル―!ジャン!くっぴー!」「うぉー!」

 何十人もの町の人たちがこちらに走ってくるではないか!

 先頭を走っているのはジェフだ。顔をくしゃくしゃにしている。

「ジェフさん!」

「リーベル!無事でよかった。ありがとう!ありがとう!」

 感動の再会だ。

 ジェフさんも、街の人たちも、どれだけ張り詰めた緊張感の中で生活をしてきたことか。

 喜びが爆発している。

「ジャン!お前すごいな」

「へへへ。知ってるー」

「くっぴーもきっと大仕事したんだろう?」

「どうしてわかるんでちゅかー?」

 肩を抱き合って喜ぶ。エドが歩いてきた。

「みんな。おかえり」

 目にいっぱい涙がたまっている。どれだけ心配してくれたことか。

「ただいま。エドさん!」

「無事に帰ってきたので約束のビーフシチュー作ってくれますか?あの味が忘れられないの~」

 ジャンが諸手をさすりながら懇願した。

「もう!仕方ないわね~。あなたたちが食べきれないくらい、た~くさん作ってあげますからね!」

「やったー」

 マエミヤの町とはまた異なる、嬉しい再会であった。

 疲れた体を癒すため、1週間ステイシアに留まることになった。

 特にリーベルのダメージが大きく、回復に時間がかかったのだ。

 スナイデルに傷を治す「最上級薬草」、体の内部から治癒力を増強する「仙湯茶」を煎じてもらった。

 そしてエドが作ってくれた栄養満点の料理。

 それらをもってしても5日間は体が上手く動かなかったのだ。

 ロドリゲスとの戦いがどれだけ熾烈だったかがわかる。

 2日間軽く体を動かした後、ステイシアの町で準備できる最高の装備を整えた。

 そしてモンマルトル寺院に向けて出発したのだ。

 旅の道中。時間はいくらでもある。スナイデルからいろんな情報を教えてもらった。

「では、モンマルトル寺院はモンスターの勢力じゃないということですか?」

「う~ん。正確に言うとモンスターもいるがな。獄竜王、ひいては四天王ヒュードラ率いるモンスター軍とは敵対している、ということだ。ルークさんが『力の聖石』を持っているというのも本当だ」

 話はこうだ。

 現在、このキシリア大陸にある大きな勢力は「モンマルトル寺院」と「四天王ヒュードラ率いるモンスター軍団」の2つに分かれていて『勇気の聖石』『知の聖石』『力の聖石』3つの石を巡って争っている。

 ダマーバンド山のガチロック、ピラミッドのロドリゲスはいずれも四天王ヒュードラの部下だ。

 3つの石を集める目的は同じようで同じではない。

 モンマルトル寺院は「3つの聖石で結界を解き、ウォリス城に封印されている獄竜王を倒す」のが目的。

 ヒュードラ率いるモンスター軍は「3つの聖石で結界を解き、獄竜王を外の世界に出す。そして世界を征服する」ことが目的だ。

 数という意味では圧倒的にヒュードラ率いるモンスター軍が優勢である。

 一方でモンマルトルは少数精鋭だ。勢力は拮抗している。スナイデルを見れば理解はしやすい。

 しかし少数だけに動ける者が少なく、『力の聖石』1つしか取れていなかったようだ。

 全く知らなかった。いや、知っている人がいるのだろうか?

「モンマルトルとしては四天王ヒュードラに刺客を送って足止めをする一方で、私がロドリゲスを倒して『知の聖石』を手に入れる作戦だったのさ。『ログ・コンパス』を手に入れたかったが、君たちに先を越されたのは以前話した通りだ」

「僕たちが聖石を2つ持っていてもいいんですか?」

 リーベルが聞いた。

「君たちの目的が我々と同じということが分かったからいいさ。獄竜王を倒せる力のある者が結界を解き、倒したらいい。そもそも君たちはまだ『力の聖石』を手に入れられてないんだぜ?」

「剣聖ルークとも戦わなければいけないんですか?」

「ほう。ルークさんは『剣聖』と呼ばれているのか?戦うのかどうかは私にはわからんよ。会って話をしてみるといい」

 剣聖ルークの話をした時、スナイデルさんは興味深そうな表情になった。

 ガチロックやロドリゲスと同じように戦わなければならないのだろうか?スナイデルの仲間と・・・。

 一方で、だいぶ話がわかってきた。

「無敵の結界」はモンスターたちにとっても邪魔な存在なのだ。

 だから四天王ヒュードラは聖石を3つ集めるため、ロドリゲスと一緒にモンマルトルを攻めようとしていたのだ。

 もちろんこのことはスナイデルに伝えている。

 戦う直前にロドリゲスが言っていた「モンマルトルに偵察隊を送り込んだ」ことも。

「この先、山のふもとに小さな村がある。今日はそこで宿を借りよう。そこまで来たら、モンマルトルまであと少しだ。ということは、ヒュードラが放った偵察隊と遭遇する可能性がある。みんな、気を付けるんだ」

「はい!」

 スナイデルへの信頼は絶大だ。

 しばらく歩くと見えてきた。こじんまりとした小さな村だ。

 家も10件ほどしかなさそうで、何人かのおじいさん/おばあさんが農作業をしている。

「こんにちは~」

 誰にということもなく挨拶しながら村に入った。すると

「おい。そこの若いの」

 声をかけられた。

 見るとひとりのおじいさんが道端に座っている。

 木で作ったテーブルの上に木彫りの彫刻が並んでいた。

「わしは近くに住んどるモンじゃがの。木彫りの彫刻はどうじゃ?安くしとくぞ?」

 スナイデルの表情がぴくっと動いたように見えた。

 彫刻を見ると確かに上手だ。タカやワシ、犬などの動物。チューリップや睡蓮などの植物。

 そして・・・ロボットだろうか?メタリックな質感や細部が見事に表現されていて強そうだ。

 かっこいい。しかし・・・

「ありがとうございます。すごく素敵です!でもあまりお金がないので・・・ごめんなさい。」

「ああ、そうかい。褒めてくれてありがとよ。ちなみに君が一番気に入ったのはどれだい?」

「全部素敵だけど、僕は特にロボットの彫刻がかっこいいと思いました。すごい彫刻を見せてくれて、ありがとうございました」

 リーベルは丁寧にお礼を言ってその場を去った。この村に商売をしに来ているのだろう。

 買ってくれるお客さんが多そうな感じはしないが。

 スナイデルが村長さんと話をして宿を借りてくれた。

 決して広くはないが十分だ。荷物を置いて、腰を下ろす。すると

「リーベル!こちらのおばあさんが近くの水飲み場まで水汲みに行くそうだ。もうすぐ暗くなるし、念のため一緒に行ってあげてくれ」

 スナイデルの声だ。

「はい。わかりました」

 スナイデルはおばあさんを怖がらせないように言わなかったが、ヒュードラの偵察隊が近くにいる可能性も考えたのだろう。

 確かに危険だ。

「おばあさん、行きましょう」

「ありがとうねぇ。若い子に守ってもらって、心強いわぁ。どこから来たの?」

 話をしながら歩みを進めた。

少し歩くと小川にたどり着いた。川幅は広くはないが、水量が多い。

 周りに高い草木が生い茂っていて、知らない人にとっては見つけにくそうだ。

「ありがとね。ここ、ここ」

 とおばあさんが水筒に水を汲もうとした時、かすかに鼻の先がツンとした。

「おばあさん!ちょっと待って」

 おばあさんに駆け寄り、一緒に身をかがめた。

 かすかだが、確かに感じた。盗賊団のアジトに潜入した時、いつも嗅いでいた匂い。

 モンスターの匂いだ。至近ではないが、遠くない距離にいる。

 でも辺りの草木は高く生い茂っていて視界が悪い。

 偵察隊だろうか。

 すぐに襲ってこず、慎重にこちらの様子を伺っているように感じる。

 この敵は・・・手強い。

 ゆっくりと剣を抜き、いつでも戦える態勢を取った。その時、

「ひやー!あそこにモンスターがおるぞ!誰か助けてくれぇー」

 後ろから叫び声が聞こえた。

 彫刻売りのおじいさんが指を指しながら腰を抜かしている。

 指を指している方向を見ると、いた!上手く隠れているがモンスターだ。

 リーベルが体の向きを変えた次の瞬間、

「ファイア」

ボォオーウワァッ!

 炎が一直線にリーベルに飛んできた。

 周りの草木を燃やしながら炎の球が向かってくる。

 間一髪、想いの盾で受けることができた。

 炎の勢いに押されて体が後ろにのけぞる。盾越しに炎の高熱を感じた。

 危なかった。今のは・・・魔法だ。

 お母さんが魔法の先生だから、魔法自体は見たことがある。

 椅子を動かしたりカーテンを引いたり。

 でも人に害を与える、攻撃を意図した魔法を見たのは初めてだった。

 もし想いの盾がなかったら。もし彫刻売りのおじいさんがモンスターの場所を教えてくれなかったら・・・。

 ごくり。

 リーベルはつばを飲み込んだ。

と にかくおじいさんとおばあさんを守らなければ。すぐに思考は戦闘モードに入った。

 どうやって勝つか考えるのは得意だ。モンスターとの位置を慎重に詰める。

 魔法使いなら接近戦が苦手なはずと考えた。そしていま大事な問題は敵の数だ。

 周りの様子を伺う・・・・・・。よし。モンスターは1体だと確信した。

「おじいさん、おばあさん、あっちの道から逃げて!このモンスターは僕が引き留めておくから」

「おーわかった。たのむぞい」

「ファイア」

 ボォオーウワァッ!

 もう一発来た!今度はかがんでかわす。

「あつっ」

 少しかすった。背中がひりひりする。

 でも・・・おじいさんとおばあさんが逃げる時間稼ぎはできた。

 あとはどう倒すかだ。魔法を使う相手との初めての戦い。

 手に汗を握り、リーベルは剣を構えた。

魔法を操る偵察隊 さかもと

ぬぅ。まさかこんなところで手練れと出会うとは。それにしても気配を消すのが得意な私の位置を感知されるとは想定外だ。不思議なのはあのじじい。あの場所から私の位置がわかるはずがないのだが・・・。そして、じじいが声を出さなければ私のファイアは命中していたはず。何かがおかしい。モンマルトル寺院にルークとスナイデルがいないのはわかっている。明日の攻撃前にへまをするわけにはいかぬ。多少派手になってしまうが、魔法力全開で  この少年を倒さねば。私をただの魔法使いと思って近づいてくれるとやりやすいのだが・・・さて。

ペンタコイン×3枚

①英語(TOEIC)や簿記などの資格や
 受験勉強、お子さんの漢字/計算
 学習など習慣づけしたいことを「
 1日30分」あるいは「1日30回」
 実施してください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
 ット。魔法を操る偵察隊 さかもと
 は3枚持っているので3日実施出来
 たら勝利です。次のストーリーに
 進んでください。

魔法を操る偵察隊 さかもとの紹介

炎系の魔法が得意な魔法使い。身長が低いこともあって敵に見つかりにくいため、偵察隊に所属している。頭はいいがずる賢い性格で友達はいない。「性格の悪さが顔に出ている」とよく言われる。魔法だけでなくて実は剣術にも長けている。魔法使いだと思って安易に突っ込んでくる敵を杖に仕込んだ刃で切って落とすことにこの上ない喜びを感じている。

勝ったら第11話へ

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ABOUT ME
ねじ男爵
子供の頃の私と同じくゲーム好きの息子。小学校の漢字テストで驚愕の点数を叩き出す。ゲーム感覚で学習できたらと「ドラゴンスタディ」を考案しました。ストーリーを一緒に読み進めると楽しいらしく、点数は大幅UP(それだけ余地があったということ)。机に向かう習慣も付きました。興味を持った妻も「まあまあじゃない」と自分の医療系の資格勉強に利用してくれました。(平均)66日で習慣化します。1人でも多くの方が自分の目標を達成できるお手伝いができたら嬉しいです。