ストーリー

第8話 砂嵐の正体

 ザッザッザッザッ。

 5メートル先も見えないひどい砂嵐の中をリーベルとジャン、黄色いうさもぐらんのくっぴーは歩いていた。

 リーベルの右手には時計のような方位磁石が握りしめられている。

 ピラミッドの場所を指し示す『ログ・コンパス』。

 盗賊団のボスを倒してゲットしたものだ。

 不思議なことにこの『ログ・コンパス』の針は常に一定の方向に白い光を発していて、その光は砂嵐の中でもはっきりと見える。

 ピラミッドの場所を示しているに違いない。

 その方向に向け、3人(2人+1体)はひたすら歩いていた。

「それにしても『疾風』っていう人、強すぎなかった?あの人がいなかったら無事に脱出できてないよね」

 砂が口に入らないようにスカーフで口元を押さえながらジャンが言った。

 その通りだ。

 リーベルは盗賊団のアジトで体験したことを思い出した。

 『疾風』を迎え撃つべく「集会の間」に布陣した盗賊団の最強集団、1番隊。

 20体のモンスターたちは相当の強さだったはずだ。

 大混乱しているのをチャンスとばかりにボスのところへ向かったが「集会の間」を出る直前にリーベルは見た。

 1番隊が万全の態勢で待ち構えている陣形の中へ、稲妻のように飛び込んだ人影を。

 それは何かの演舞のようだった。

 人影が踊るように剣を振るう度に、屈強な1番隊のモンスターたちが倒れてゆく。

 あまりの美しさにリーベルは足を止めてみとれていた。

「リーベル!何してんの?早く行かないと!えっ?・・・」振り向いてリーベルを急がせようと声をかけたジャンも『疾風』の強さ、美しさに息を飲んでいた。

 今やるべきことはボスを倒して『ログ・コンパス』を入手することだ。

 思い直してボスを追いかけてようとしたその瞬間だった。

 『疾風』は戦いながらもこちらを見た。そして一瞬ではあったが確かに目が合った。

「ドクン!」

 リベールはぞくっとした。

 邪悪な気配ではなかった。しかし、圧倒的な力の差を感じた。

 何より敵か味方かがわからない。

 状況からすると少なくともモンスターの味方ではないようだが・・・。

 今はそのことだけで十分と考えるしかない。

 盗賊団のボスを倒し『ログ・コンパス』をゲットした一行はボスが逃げようとしていた出入り口から脱出したのだった。

 ほっと一息つきたいところだが、そうは言っていられない。

 急いでステイシアの町に行かなければ。

 砂漠の暴君 ロドリゲスの襲来に備える必要があるからだ。

 ジェフのお母さん、エドも危ない!焦りが募る。

 砂嵐が収まっていたことが幸いした。

「よっしゃ。砂嵐が止んでるなら俺に任せとけ」

 ジェフが太陽の位置や自分のコンパス(『ログ・コンパス』ではない)、風の匂いを元にステイシアの町の場所を推測し、先導してくれた。

 頼もしい。無事にステイシアの町に着いた一行は寝る間も惜しんで走り回った。

「砂漠の暴君 ロドリゲス率いるモンスター軍が攻めてきます。女性と子供は避難する準備をしてください。男性は女性と子供、町を守るために戦いましょう。装備を整えて、作戦を立てるのです」

 必死で訴えたが最初から上手くいったわけではない。

「なんだと?見かけない顔だが君たちはどこの子だ?寝言を言ってるんじゃない!『オオカミ少年』と呼んでやろうか?そしてその黄色いうさもぐらんはなんだ?お前らはモンスターの手先か?」

 信じたくない気持ちもあったのだろう。警戒心も手伝ってなかなか話を聞いてくれなかった。

 その時、守ってくれたのはジェフさんだ。

「お前ら、命懸けで町を守ろうとしている勇者の話が聞けないっていうのかい?この子たちは、俺たちを苦しめた盗賊団からキャラバンを守り、アジトに潜入してまで町を守ろうとしてくれたんだぞ?だからこそ、ロドリゲスがこの町を攻めるという情報を入手できたんだ。そんなことをしたやつが一人でもこの場にいるんかい?そしてなあ、黄色いうさもぐらんもいいやつだ。くっぴーがいたから俺らはアジトから脱出できたんだ。いいか?俺が言ってるんだ。文句があるなら俺に言え!」

 ジェフさんの啖呵は効果絶大だった。

 キャラバン隊としての普段の仕事ぶりをみんなが知っていたからだ。

 どんな危険なルートでも逃げることはなかったし、みんなを守ろうと誰よりも考え行動していた。

「・・・確かに。リーベルとジャンと言ったか?あと・・・くっぴーだったな。ごめんよ。変なこと言っちゃったな。俺たちが間違っていたよ。女子供と町を守るのは俺たちの責任だ。ジェフ!やるぞ!」

「わかってくれたなら、いいってことよ」

 エドは涙ながらにそのやり取りを聞いていた。子供の成長がどれほど嬉しいものか。

 この流れができたからはとんとん拍子だった。

 もともとモンスターの脅威から独立独歩で町を守ってきた人たちだ。意識は高い。

 女性や子供たちの避難経路をどうするか?誰がどう守るのか?どういう組織、仕組みにするのか?

 自分たちでどんどん話を進め始めた。

 その様子を見たリーベルとジャン、そしてくっぴーは同じ思いだった。

 町を守る準備はもう心配ない。今度は町が襲われないようにするにはどうするか?だ。

 答えは出ている。

 手に入れた『ログ・コンパス』を使ってピラミッドに行き、ロドリゲスを倒すのだ。

 そうすれば町が襲われる心配がないし、旅の目的である『知の聖石』もゲットできる。

 町の防衛はジェフと街の人たちに任せ、リーベルとジャン、くっぴーは『ログ・コンパス』を頼りにピラミッドへと向かったのだった。

 ビューゥウウーーー。

「永遠に続くのだろうか」そう思うほどの砂嵐。

 ザッザッザッザッ。

 単調な音が繰り返される。

 リーベルは『ログ・コンパス』を見た。大丈夫。方向は間違っていない。

 ピラミッドを指し示す白い光が強くなっているようにも感じる。

 ピラミッドは近いのだろうか?すると・・・

「リーベル!リーベル!」

 遠くからジャンの声が聞こえる。

 リーベルが顔を上げると、いつの間にか砂嵐はすっかり止んでいた。そして・・・

「ほら!あれ!」

 見える。巨大なピラミッドが砂漠に鎮座していた。

 先端が雲にも達しているかのように見える。まだ距離があるにも関わらず、すぐ近くにあるかのように巨大だ。

 これが誰もたどり着いた者がいなと噂されるピラミッドだ。

 満月の夜は今夜。急ぐ必要がある。だがむやみに突っ込むのもためらわれた。

 リーベルはジャン、くっぴーと事前に行った作戦会議のことを思い出した。

「いいでちゅか?モンスターの間では「知の聖石」は絶対に誰も奪うことができないと言われているでちゅ。その理由は3つ。

  • ①ピラミッドの場所の秘密
  • ②砂嵐の謎
  • ③ピラミッドの地獄

でちゅ。①は『ログ・コンパス』を手に入れたことで解決するはずでちゅ。だから問題は②の『砂嵐の謎』。これはぽっくんにもわからないでちゅ」

「砂嵐の謎」それは何だろうか?

 さっきまでものすごい砂嵐だったが『ログ・コンパス』のおかげでなんとかピラミッドを見つけることができた。

 確かに①はクリアだ。そして今はすっかり晴れている。

 いまリーベルたちがいる場所からするとピラミッドの反対側、遠くの空が灰色に染まっている。

 きっと激しい砂嵐になっているに違いない。でも砂嵐は遠い。

 位置的に砂嵐に巻き込まれることなく、ピラミッドにたどり着けそうだ。

 ②の『砂嵐の謎』は解けていないが、進むべきか?迷うリーベル。

「ジャン!くっぴー!」

 リーベルは声をかけた。

「『砂嵐の謎』は解けてないけど、このまま待っていても仕方ないと思うんだ。今夜が満月だし、体力も消耗してしまう。だから、夜を待たずにこのまま一気にピラミッドに向けて進みたいんだけどどうだろう?何かあっても僕がなんとかしてみせる」

 リーベルは覚悟を持って言った。少し考えてジャンが言った。

「リーベルの言う通り、それしかないよね。時間をかけて謎を解いたとしても町が攻撃されたら意味ないし。行こうよ。『砂嵐の謎』が何であっても、僕たちなら乗り越えられるよ。くっぴー。ピラミッドに着くまでの間、ピラミッドの地獄について教えてくれない?」

 ジャンが嬉しいことを言ってくれた。

「まかせてくださいでちゅ。みんな優しいし、いいチームワークでちゅ」

 くっぴーは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら言った。

一行は晴れ渡った空の元、ピラミッドに向かうことにした。

「ピラミッドの地獄はでちゅね・・・」くっぴーの話はこうだ。

 ピラミッドの中は巨大な迷路になっているらしい。その迷路の中に

・底なし流砂地獄

・圧倒的な地獄

・地獄の中の地獄

と呼ばれる地獄があると言われている。

 流砂とは、水分を含んだもろい地盤のことだ。

 一度入ってしまうと、底がないとしか思えないほど、深くまで沈んでしまう。

 もがけばもがくほどだ。そういう地獄なのだろう。これは想像できる。

 が、残り2つは言葉だけでは全然わからない。

 ちなみにこれらの情報は盗賊団のボスが砂漠の暴君 ロドリゲスから『ログ・コンパス』を任された時に、あまりにも嬉しくてお酒を飲みすぎたようだ。

 酔っぱらって大声で秘密をもらしていたらしい。

「『底なし流砂地獄』はぽっくんに任せるでちゅ。ぽっくんは『すなもぐらん』でちゅ。流砂なんてへっちゃらでちゅから!」

 頼もしい仲間だ。

 ザッザッザッザッ。

 そうこうしているうちに、だいぶピラミッドに近づいていた。

 太陽が西の空に沈むまでもう少し時間がある。よし。夜までに着けそうだ。

 そしてきっと激しい砂嵐になっているであろう、灰色の空は・・・。

「えっ?」

 リーベルは奇妙なことに気づいた。

 さっきまで灰色になっていたのはピラミッドの向こう側、遠くの空だったのだが・・・。

 明らかに近づいている。心なしか、風も強くなってきた。

「ジャン!くっぴー!急ごう!」

 ピラミッドまであと少しなのだ。先を急ぐ。

 灰色の空は不自然なくらい一直線にこちらに向かってくる。砂が激しく舞い始めた。

「ちょっと!急に何これ?」

 ジャンが叫ぶのも無理はない。砂が目に入らぬよう目を細めたリーベルが灰色の空を見ると、それは「いた」。

 灰色の空の中心だ。何かが飛んでいる。

 その何かが羽ばたくたびに竜巻のような暴風が巻き起こり、砂が視界をさえぎる。

 リーベルは悟った。これが「砂嵐の謎」だったのだ。

 灰色の空の中心を飛んでいた何か。もはや、はっきりと見える。

 巨大な鳥がこっちに一直線に近づいてきているからだ。

 なんと、強烈な砂嵐はこの巨大な鳥型のモンスターの羽ばたきによって発生していたのだ。

「クワァアアーーーー!」

 かん高く、大きな鳴き声を発した。明らかに怒っている。

 ドーン!

 鳥型のモンスターがリーベルたちの目の前に着地した。すごい重量感だ。

 大量の砂漠の砂が舞い上がった。

「わっわっわっわっわー」

 ジャンがしりもちをついた。

「何だ?お前らはー?なぜピラミッドの位置がわかった?ん?それは『ログ・コンパス』じゃねえか。あのやろう。大切なものを奪われやがって!ということは、お前らのうちの誰かが噂の『疾風』だな?もう誰でもいいわい。わしがお前らを全滅させてやるわ。クワァアアーーーー!」

 簡単にはピラミッドに入らせてくれないらしい。

 リーベルは剣を握りしめた。

ピラミッドの守護神 ガルーダ

クワーックワーックワー!それにしてもよく『ログ・コンパス』を手に入れられたな。盗賊団の頭はおっちょこちょいだが、部下が優秀だから安心していたのだが。特に1番隊、2番隊などはやつの部下にはもったいない強さ。それらを撃破したとすると侮れん。疾風はどっちだ?・・・何も言わんか。まあ戦ってみればすぐにわかる。モンマルトルとの大戦の前に邪魔者は消すのみ。疾風をやっつけたとなればロドリゲス様もたいそう喜んでくださるだろう。クワーックワーックワー!

ペンタコイン×3枚

①英語(TOEIC)や簿記などの資格や
 受験勉強、お子さんの漢字/計算
 学習など習慣づけしたいことを「
 1日30分」あるいは「1日30回」
 実施してください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
 ット。ピラミッドの守護神 ガルー
 ダは3枚持っているので3日実施出
 来たら勝利です。次のストーリー
 に進んでください。

ピラミッドの守護神 ガルーダの紹介

ピラミッドの守護神。その大きな羽をはばたかせる度に砂嵐が巻き起こるため、ピラミッドの場所を正確に知る者はいない。昔「空に浮かぶ月まで行ってみたい」と月に向かって飛び立ったことがあるが、息ができなくなって地上に落ちたことがある。自分の墓場まで持って行くべき恥ずかしいエピソードだと考えている。

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ABOUT ME
ねじ男爵
子供の頃の私と同じくゲーム好きの息子。小学校の漢字テストで驚愕の点数を叩き出す。ゲーム感覚で学習できたらと「ドラゴンスタディ」を考案しました。ストーリーを一緒に読み進めると楽しいらしく、点数は大幅UP(それだけ余地があったということ)。机に向かう習慣も付きました。興味を持った妻も「まあまあじゃない」と自分の医療系の資格勉強に利用してくれました。(平均)66日で習慣化します。1人でも多くの方が自分の目標を達成できるお手伝いができたら嬉しいです。