ストーリー

第3話 マエミヤの町と危険な山道

「さあ、さあ!お腹いっぱい食べてくださいね」

 リーベルとジャンは一軒の家に招かれ、たくさんの大人に囲まれながらごちそうをふるまわれていた。

「んぐっんぐっ!もう、もう・・・。どれから食べたらいいかわかんないよ~」

 おまんじゅうをほお張りながら右手は骨付き肉、左手はスープが入ったお茶碗を持って熟練者の餅つきのようにタイミングよく口に運んでいくジャン。

「わかんない」なんて言っているが、迷っている素振りなどない。

 一方、リーベルも食べる手が止まらない。

「おいしいです!おかわりください!」

 3杯目だ。

「どうぞ、どうぞ。町を救ってくれた、せめてものお礼ですじゃ。たーんと召し上がってくだされ」

 リーベルとジャンの正面に座っている、優しい顔をしたおじいさんが言った。周りの人たちの言葉遣い/立ち振る舞いからすると町長さんなのだろう。

 ジンとの戦いに勝利した後、二人が招かれたのは茅葺の広い家だった。町の人たちも集まり、ちょっとした宴会みたいになっている。

「ほんに、ほんにおおきに!どうお礼をしたらいいかわからんがじゃ」

 マリックはほとんど泣きそうになりながらリーベルとジャンの手を代わる代わる握って感謝の気持ちを伝えている。名のある鍛冶屋らしい。

「お兄ちゃんたち、ありがとう。このお花あげる!」

 マリックの子供、アイリーンだ。

「アイリーン、ありがとう。きれいだね」

 リーベルが言うとアイリーンはうれしそうに駆け出してマリックのひざの上に乗った。

「それにしてもモンスターどもは許せん!わしのかわいいアイリーンを危ない目に合わせよって!そもそもダマーバンドにガチロックがおるからこうなるがじゃ!」

 マリックがいきなり怒り始めた。ガチロックとはそう、勇気の聖石を守っているこの辺りのモンスターのボスだ。

「アイリーンが無事だったからよかったとせんね。こげんな子供やのにすごいねー」

 町の人が言う。

「どうじゃ?わしの見込んだ通りじゃろうもん?この子たちの、強いのなんのって!」

「マリックさん、もうベロベロに酔うとるがね。はよ休み」

 町長さんの奥さんだろうか、質素だが上品な雰囲気のおばあさんがマリックに水を渡した。

「わしはまだ寝ん!この子たちに勇者の話の続きをせんといけんからのぅぅぅ・・・zzzzz」

 寝てしまった。

 そうこうしているうちに二人はさすがに満腹になり、宴会が終わった。町の人たちは家に帰った。今は町長さんと奥さん、リーベルとジャンの4人でお話している。

「えっ?勇者がウォリス城に入った後、何があったかわからないの?」

「そう。わしらが知っているのはモンスターの大群が守る橋を、矢のように渡っていく白銀の勇者の後ろ姿までなのじゃ。そこから先は誰も行けんかったし・・・勇者も戻ってこんかったからのう・・・」

 町長さんがうつむいた。

「えっ?じゃあ、その後どうなったの?」

「うむ。勇者が橋を渡ってから、半日くらい経ってからじゃろうか」

ブゥウウウウゥウゥーーン。

 薄い水色の幕のようなものがウォリス島をすっぽりと覆いつくしたのである。これが無敵の結界だ。わかっていることはその後、勇者の姿を見たものはいないこと。そして誰もウォリス島に近づけなくなったことだ。

 反面、暗黒神官セムとすでに誕生したであろう獄竜王がウォリス城から出てくることもなかったのだが・・・。

「たくさんお話をして、君たちの強い思いはわかった。そして力があることも。すごい修行をしてきたんじゃろう。でも、それでも行くのはやめなさい。危険すぎる」

「やると決めたんです」

 まっすぐに町長さんを見るリーベル。

「お父さんとお母さんは?」

「お父さんはモンスターをやっつける旅に。お母さんは自分が決めたことをやり切りなさいと」

「・・・・・・ふー。君たちと話をしていると、こっちが恥ずかしくなるわい。わかった。【勇気の聖石】があるダマーバンド山への行き道は教えてあげよう。今日はもう遅いから、ゆっくり休みなさい」

 いろんなことがあって気持ちは高ぶっていたが、疲れた体は正直だ。乾いたベッドの上で二人はぐっすりと眠った。気持ちよく目覚めたかったところだが・・・

「大変だー!マリックが!マリックが!」

 町長さんの家に飛び込んできた男性の声で目が覚めた。

「何があったんじゃ?」

 町長さんが聞くと

「マリックがガチロックを倒すゆうて、ダマーバンド山に行ってしもうた!」

 マリックはどうやら、昨日アイリーンを危ない目に合わせたモンスターたちがよほど許せなかったようだ。自らの危険を省みず、ダマーバンド山に行ってしまったらしい。

「あいつは鍛冶屋としての腕はすごいが自分で戦うことなどなんちゃできん」

「ジャン!急ごう!」

「わかってるって」

 すでに二人は身支度を始めていた。もとより行くつもりだったダマーバンド山。マリックを守るという目的も加わったことになる。町長さんの奥さんが急いでおにぎりを握ってくれた。薬草とダマーバンド山付近の地図ももらい、準備が整った。

 町のみんなが心配そうに二人の旅立ちを見送ってくれた。アイリーンが今にも泣き出しそうにしている。

「アイリーン。大丈夫だよ。お兄ちゃんたちが必ずお父さんを守るから」

 何度もうなづいた。

「くれぐれも気を付けての。決して無理をせぬようにな」

 暖かい言葉をかけてくれる町長さん。

「ありがとうございます。必ずマリックさんと一緒に戻ります」

 リーベルとジャンが見えなくなるまで手を振ってくれた。

「リーベルくんを見ていると、あの子のことを思い出してしまうのう」

 町長さんが奥さんに語りかける。

「私もです。小さな頃から剣術と魔法に優れていたあの子ですよね。名前はなんと言いましたっけ?引っ越ししてしまったけど、ずいぶん立派になって旅に出たとか。あの子がいてくれたら、今頃獄竜王を倒して平和な世界になっていたんじゃないかと、ついつい思っちゃいますね」

 マエミヤの町を出て、地図の通り南へと進む二人。とにかく暑い。太陽が雲に隠れていることだけが救いだ。

 できるだけ坂道を避け、山のふもとを大きい迂回しながら進む。踏みしめる石は次第に大きく、草木が明らかに減ってきた。

 ダマーバンド山に確実に近づいている。岩鬼 ガチロックがいるとされる頂上までの道のりは長く険しい。さらに多くのモンスターたちが巣食っているらしい。それが誰も【勇気の聖石】を手に入れられない理由の1つだ。

 汗がひたいからアゴをつたい、したたり落ちる。暑さで体力の消耗が激しい。だが休んではいられない。マリックに追いつかなくては。鍛冶屋をしていて体力があるから歩き続けているのだろう。なかなか背中が見えない。

「ガチロックってどんなモンスターなんだろう?岩鬼。岩の鬼だからねぇ。いかつそうだよね」

 ジャンが軽口を叩く。マエミヤの町できいた話では、岩鬼 ガチロックは力が強いだけではなく、かなりの戦略家らしい。情報が多いわけではないので、あくまで噂だが。 

「戦いはもう始まっているのかもしれない。気を付けよう」

 ひたいの汗をぬぐいながらリーベルが言った。雲は晴れ、突き抜けるような青い空が前面に開けていた。疲れのあまり、足元に落ちていた視線を上げる二人。息を飲んだ。

 いつの間にここまで近づいたのか。目の前には高く、灰色の岩山がそびえている。緑ひとつないその色彩が弱者の存在を拒絶していることを表していた。

 きれいに澄み渡る青い空とのバランスの悪さがダマーバンド山の不気味さをより強くしているようだ。顔を見合わせるリーベルとジャン。

「行こう」

 歩を進めた。足の裏にかかる力が平地のそれと変わり始めた。ゴツゴツとした感触。そして坂道に差し掛かってきた。太陽の日差しが真上から降り注いでくる。暑い。日陰などあろうはずもない。

 モンスターの力が強まる、夜までには頂上に着きたい。二人は無言でひたすら進み続けた。変化は突然やってきた。

「わっわっわっ。あっちに行くがじゃ!」

 聞いたことのある、癖のある言葉。弾けるように二人は坂道を駆け上がった。見えたのは背中を向けた一人の人間がへっぴり腰で剣を振り回す姿。そしてその奥に・・・モンスターだ!

 ずんぐりむっくりとした大きな体。その割には素早い動きでマリックを追い詰めている。小さいころに本で読んだような。かわいい顔をしている。しかし、その鋭い爪は簡単に鎧や盾を引き裂きそうだ。

「マリックさん!下がって!」

 リーベルが叫んだ。

 ガッ!

 マリックが持つ剣が弾け飛んだ。絶対絶命。

「ジャン!」

 ピュン!

 ジャンはすでに態勢を整えており、素早く弓矢を放った。マリックを狙っていたモンスターからすると、角度的に死角になっている。

「当たる!」

 確信した瞬間、グルリ。モンスターの太い首がくるりと回った??そして・・・バシッ!大きなツメで矢を叩き落した。

 ん~?新しい敵を確認するかのようにゆっくりと首をかしげた。のそり。今度は体ごと首の方向を向いた。こちらから片付けようと考えたのだろう。

 よし。マリックさんは大丈夫だ。リーベルは安堵した。あとは・・・

「さあ、来い」

 リーベルは目に入りそうな汗をぬぐい、武器を握りしめた。

怪力無頼漢 ポックル

ぐもももも?今のは危なかったような気がするも。だからちょっとだけ頭にきたも。すばやくドーンと動いてバーンとしたいけど、面倒くさいからわざとゆっくり行くも。ダマーバンドの山道は危ない。強くて長い足で素早く動くポックルがいるから行かない方がいいって、もっともっと言ってほしいも。それじゃあ、バーンとするも。

ペンタコイン×3枚

①英語(TOEIC)や簿記などの資格学
 習やお子さんの漢字/計算学習など
 習慣づけしたいことを「1日30分
 」あるいは「1日30回」実施してく
 ださい。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
 ット。怪力無頼漢 ポックルは3枚
 持っているので3日実施出来たらあ
 なたの勝利です。次のストーリー
 に進んでください。

怪力無頼漢 ポックルの紹介

デマバント山に棲みつく大型のモンスター。かわいい見た目とは正反対の暴力的な性質を持つ。鋭い爪と怪力は脅威。足が短く、動きがノロいことが弱点。結構自分で気にしているのだが、気づかれないようにポーカーフェイスに努めている。

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ABOUT ME
ねじ男爵
子供の頃の私と同じくゲーム好きの息子。小学校の漢字テストで驚愕の点数を叩き出す。ゲーム感覚で学習できたらと「ドラゴンスタディ」を考案しました。ストーリーを一緒に読み進めると楽しいらしく、点数は大幅UP(それだけ余地があったということ)。机に向かう習慣も付きました。興味を持った妻も「まあまあじゃない」と自分の医療系の資格勉強に利用してくれました。(平均)66日で習慣化します。1人でも多くの方が自分の目標を達成できるお手伝いができたら嬉しいです。