ストーリー

第5話 砂塵が逆巻く大地

「方向、間違ってないよね?もう干からびちゃうよ」

 ジャンは犬のように舌を出しながら言った。リーベルとジャンは炎天下のもと、地平線まで続くかのような砂漠をひたすら歩いていた。

 リーベルは胸ポケットから地図を出し、太陽の位置と照らし合わせて方角を確かめる。うん。間違いない。もうじきオアシスの「ステイシアの町」に着くはずだ。

 岩鬼 ガチロックとの死闘を制したのは2週間前になる。

「マリックさんってホントすごいよね。もらった武器がなかったらと思うとぞっとしちゃう」

 ジャンがハヤブサの弓にほおずりしながら言った。その通りだ。それ自体が砦となっていたダマーバンド山。道中も助けられたが、ガチロックとの戦いの中でもその威力を存分に発揮したのだ。

 戦う前からリーベルとジャンの体力は極度に削られていた。軽くて丈夫なハヤブサの弓でなかったら、ガチロックにダメージを与えられなかったであろうし、そもそも弓を引けなかったに違いない。

 そして想いの盾は表面がわずかに湾曲しているのに加え、細い金属が編み込まれている。これが影響しているのだろう。ガチロックの強い攻撃を絶妙な角度で受け流すことができ、何度も危機を救ってくれた。

 リーベルは自分の技術以上の、何か魔法が助けてくれているかのような感覚を覚えた。

「おまんと盾の気持ちが通じ合ったからじゃ。気持ちが通じると、お互いが力を引き出し合ってより強うなる。若き日の白銀の勇者とラグナロクのようにの」

 黒い石まみれであったが、マリックは誇らしい顔で言ってくれた。

 辛くもガチロックを倒した一行はマリックを無事に帰すため、いったんマエミヤの町に戻った。町中の人たちが集まって帰りを喜んでくれた。

 アイリーンは町の外まで出てきて泥だらけのマリックの胸に飛び込んだ。そして泣きじゃくった。うれし泣きで本当によかった。親が子を想う気持ち。子が親を想う気持ち。

「お兄ちゃんたち、本当にありがとう」

 そう言った時のアイリーンの表情は一生忘れないだろう。

 マエミヤの町で2日休息を取り、リーベルとジャンの二人は出発した。オアシスの「ステイシアの町」を目指して。

 理由はもちろん、「知の聖石」を入手するためだ。「知の聖石」は砂漠のピラミッドに棲む「砂漠の暴君 ロドリゲス」が守っているとされている。

 詳しい位置や情報はつかめていないが、「ステイシアの町」に行けば何か情報は得られるはずだ。ステイシアの町までの地図はマリックからもらうことができた。

「勇気の聖石って、思ったより小さかったね。少し光っているのが不思議だけど」

 ガチロックを倒した二人は勇気の聖石を手に入れた。ピンポン玉くらいの大きさだが、大きさの割にずっしりと重い。そしてぼわーっと、ほのかに青く光っている。確かにこんな石は見たことがない。

 残りの2つの聖石はどんな石なのだろうか?頭に巻いたターバンが落ちないように気を付けながらリーベルはのどをうるおした。目を凝らすと、見えた!

地上の熱でぼやけて見えるが青色の水と町。「ステイシアの町」だ。二人は歩みを速めた。

「ついにとーちゃっく!」

 両手を上げ、ジャンピングした態勢で町に入ったジャン。喜びがあふれている。

 町の中央に青々とした大きなオアシスがあり、その周りを囲むように背の低い建物が立ち並んでいた。建物の隙間では抜け目なくテントを張った露店も多い。かなり栄えているようだ。

「すごい人だね」

 自分たちの故郷と比べるべくもない。たくさんの人々が行き交い、お店で買い物をしている。リーベルもなんだかワクワクしていた。

「あら?君たち、見ない顔ね。迷子にでもなったの?」

 頭と口元をスカーフで覆った女性が話かけてきた。声の感じではお母さんくらいの年齢かな?とリーベルは思った。

「僕たち旅をしていて、いま着いたんです。にぎやかな町ですね」

 リーベルが答えた。

「ちょっと前はもっと栄えてたんだけどね。旅をしていて今着いたってことは今夜泊まる場所も決まってないんじゃないのかい?この町の宿屋は高いし、もしよければうちに泊まる?息子が一人いるけど。」

 親切な女性だ。顔を見合わせる二人。

「ありがとうございます。では泊めてください」

 名前と出身など、簡単な自己紹介をしたのち、女性の後について一軒の家に入った。

 決して贅沢な造りではないが、掃除が行き届いていて快適そうだ。家に入ると外の暑さが嘘のようにひんやりしていて気持ちがいい。

「この奥の部屋を使っておくれ。荷物も置いて、ゆっくり休むといいよ」

「はい」

 二人は重い荷物と装備を置いて一息つくと、リビングで冷たいお茶を出してくれた。女性はすでにスカーフを取っている。やはりお母さんと同じくらいの年齢だ。お母さんよりも少しだけぽっちゃり系だと思った。

「あーおいしいぃぃ~。生き返るぅぅううー」

 ジャンは大喜びだ

「本当においしいです。ありがとうございます。あの・・・」

「名前はエドよ。喜んでくれてよかったわ。若い子を見るとほっとけないのよ。ところで、どうして旅なんかしてるの?」

 興味津々といった表情だ。二人は理由を話した。

「へ~。小さいのにすごいわね。でも知の聖石といったら・・・もしかしてピラミッドに行くつもりなの?」

 けげんな表情だ。心配してくれている。

「はい。行き方を教えてもらえませんか?」

「う~ん。ピラミッドへの正確な行き方は誰も知らないわ。ただ、このステイシアの町と定期的にキャラバンが往来している『リープルの町』の近くと言われているわね。あそことは交易がさかんなのだけど、最近ちょっとね・・・」

「何かあったんですか?」

「うん。最近、ステイシアとリープルを結ぶルートのキャラバンを狙ったモンスターの盗賊団が横行しているのよ。荷物をごっそり持って行かれるわけ。危険だっていって、この町に来る人がずいぶん減っちゃってねぇ」

 エドがさっき言っていたことはこのことなのだろう。

「息子のことも心配で・・・」

 と言った時、家のドアが開いた。

「ただいま。おっと小さなお客さんだね」

 真っ黒に焼けたさわやかなお兄さんが家に入ってきた。エドの息子のようだ。

「おかえりジェフ。この子たちは二人で旅をしていてね。うちに泊めてあげることにしたのさ」

「そうかい。何にもない家だが、ゆっくりしていってよ」

 さわやかだ。かっこいい。

「キャラバンの道中は何もなかったかい?あ、そうそう。この子はさっき話をしたキャラバンのメンバーでね。リープルの町から今帰ってきたのさ」

「帰りは何もなかったけど、行きはおそわれたよ。護衛団が付いてくれていたのと、盗賊団の人数が少なかったからなんとか撃退できた。でも今回で、護衛が付いていることがばれちゃったから、次はもっと大人数でおそってくるかもな。まあ、なんとかなるさ」

 さわやかだ。かっこいい。

「まあ。心配ねぇ・・・。次の出発はいつなの?」

「3日後さ」

 リーベルにいい考えが浮かんだ。

「次のキャラバン、僕たちも連れて行ってください!」

 エドとジェフ、ジャンの3人は目を丸くしてリーベルを見つめた。

 3日後、リーベルとジャンはリープルの町へ向かうキャラバンに同行していた。護衛団のメンバーとしてである。

「もうだいぶ慣れたな。うまいもんだ」

 隣にいるジェフがラクダの乗り方をほめてくれた。この2日間の特訓の成果が出ているようだ。

「リーベルも無茶なことを考えるよね」

 反対側の隣を行くジャンが言った。3日前に皆を驚かせた、リーベルの考えはこうだ。

 リープル行きのキャラバンに護衛団として同行する。何もなければそのままリープルの町に行けばよい。

 どのみち「知の聖石」を守る「砂漠の暴君 ロドリゲス」のいるピラミッドに行くためにはリープルの町に行く必要があるのだから。

 もしモンスター盗賊団が襲ってきたらキャラバンを守る。守るだけではなくて、チャンスがあればリーベルとジャンが盗賊団に変装してアジトに行き、盗賊団のボスをやっつける、というものだ。

 盗賊団はなぜか全員覆面をしているというジェフの話を聞いて可能だと考えた。ただ撃退しただけではまた襲ってくる可能性がある。つまりジェフたちキャラバンは常に危険にさらされるのだ。

 危険は元から断つ方がいい。それにこの辺りのモンスターはロドリゲスの部下に違いない。敵の戦力を削る、という意味もある。

 ザサ、ザサ、ザサ。

 砂漠の上を歩くラクダ独特のリズム。足音が妙に大きく聞こえる。

「二人とも、気をつけな。前回襲われたのはこの辺りだ。つまり、盗賊団のアジトに近いということさ」

 キャラバンのメンバーに必要以上の心配をかけぬよう、ジェフは小さな声で教えてくれた。ごくり。にわかに緊張感が増す。

「風が出てきたな」

ビュゥーー。

 確かに風が強くなってきた。砂塵が舞い、視界が悪いがどうしようもない。その時だった。遠くから

「ザサッザサッザサッザサッザササッサササ!!」

 ラクダがアップテンポで走っているかのような音が聞こえる。見えはしないが、相当な数だ。

「やつら、来やがった!やっぱり前よりだいぶ多いぞ。みんな、気をつけろ!」

 ジェフがみんなの注意を促した。

「戦闘準備!」

 護衛団のリーダーが指示を出す。

「ジャン!来たよ!」

 予定通り、ラクダを降りて装備を確認する。ラクダの上に乗ったままの戦闘には慣れていないからだ。

「ヒャーッホォー」

 砂塵の中から黒い影が見えてきた。勢いよくこちらに向かっている。ラクダのような四足歩行。上半身は二本の腕が生えており、大きな斧を持っている。

 リーベルは自分が戦う敵を見定めた。

砂漠の盗賊団 グリンチ

ひゃっほー!奪え奪え~い!お前はこっち、お前はあっちを狙え!こいつら護衛団を雇ってやがるから気を付けろよ。俺たち5番隊の力を見せつけてやれ!ん?なんだかちっこいやつがいるな。子供の遊びじゃないってことをおしえてやらないとなぁ。モンマルトルへの攻撃も近いようだし、食料を万全にしとかねえとロドリゲス様に怒られちまうぜ!

ペンタコイン×3枚

①英語(TOEIC)や簿記などの資格や
 受験勉強、お子さんの漢字/計算
 学習など習慣づけしたいことを「
 1日30分」あるいは「1日30回」
 実施してください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
 ット。砂漠の盗賊団 グリンチは3
 枚持っているので3日実施出来たら
 勝利です。次のストーリーに進ん
 でください。

砂漠の盗賊団 グリンチの紹介

砂漠を移動するのに適した四足歩行のモンスター。普段はお調子者だが、ちょっとしたことですぐにくよくよする気弱な一面を持つ。お肉はじっくり焼いて食べるタイプだが、おこげは健康によくないと考えており、食べない。時間は必ず守る。

勝ったら第6話へ

ストーリー一覧へ

ABOUT ME
ねじ男爵
子供の頃の私と同じくゲーム好きの息子。小学校の漢字テストで驚愕の点数を叩き出す。ゲーム感覚で学習できたらと「ドラゴンスタディ」を考案しました。ストーリーを一緒に読み進めると楽しいらしく、点数は大幅UP(それだけ余地があったということ)。机に向かう習慣も付きました。興味を持った妻も「まあまあじゃない」と自分の医療系の資格勉強に利用してくれました。(平均)66日で習慣化します。1人でも多くの方が自分の目標を達成できるお手伝いができたら嬉しいです。