ストーリー

第6話 アジト潜入

 戦いは困難を極めた。

 砂塵で視界が悪いことに加え、敵は多数だ。護衛団と協力し、複数の敵からキャラバンを守らなければならない。

さらにアジト潜入のためには敵を倒すだけでなく、覆面を奪って変装する必要があるのだ。

 ケンタウロスに似た盗賊団が持つパワーに圧倒され続けるリーベル。数合の剣戟で力では勝てないと悟った。この敵のパワーを利用しなければ。逆に力で圧倒できると確信し、勢いづいた敵はとどめとばかかりに両手で斧を振り上げた。

「ここしかない」

 リーベルはひざを軽く曲げて重心を下げ、準備した。力任せに振り下ろされた斧を受け止めるのではなく、想いの盾で右側に受け流した。モンスターにとってはその威力を増大させている斧の重さが災いした。

ズンッ!

 受け流された斧は砂地に勢いよくめり込む。抜けない!その一瞬をリーベルは見逃さなかった。

ズバッ!

 ギリギリだったが、なんとか倒して覆面を奪った。素早く周りを見回す。と、ジャンも相対するモンスターをやっつけたところのようだ。護衛団もなんとかキャラバンを守っている。

 ジェフも半月刀を両手に持ち、戦っていた。強い!砂の上にも関わらず、軽い動きで翻弄しモンスターを倒した。

 一方、盗賊団としては前回よりも大勢でキャラバンを襲ったにも関わらず、思わぬ苦戦を強いられていることに違和感を覚えていた。すでに数体のモンスターがやられている。

「なんだこいつら?よほど強い用心棒でも雇いやがったのか?」

「ぐわっ」

 また一体、モンスターが倒れた。そろそろか。

「ジャン!」

 大きな声で合図を送る。

「わかった」

 二人は素早く奪った覆面を被った。そして砂塵で視界が悪いのを逆に利用し、盗賊団の一員かのようにポジションを変えた。あたかもキャラバンを襲おうとしているかのようだ。その時、

「えーい!いったん退却するぞ」

 盗賊団のリーダーだろうか?掛け声がしたと思うと一斉に撤退し始めた。

「来た!」

 覆面を被ったリーベルとジャンは盗賊団と同じ方向に走った。この先にアジトがあるに違いない。盗賊団は思いがけない反撃を受け、混乱している。

 誰も仲間のことなど気にしてはいない。よし。上手くいきそうだ。隣を走るジャンと目を合わせた。その時、

「やったな」

 すぐ後ろから低い声が聞こえ、びくっとした。振り向くと両手に半月刀を持ち、覆面を被った人間が!

「!!!」

 ジェフだ。驚きすぎて危うく声が出そうだった。なんとジェフも自分が倒したモンスターの覆面を奪い、アジトに潜入しようとしているのだ。

 これは予定外だった・・・が、今さらどうしようもない。変な動きをすると怪しまれるし、ジェフは十分強い。作戦変更だ。3人でアジト潜入を成功させるのだ。

 しばらくすると、移動の速度が落ち始めた。アジトが近いのだろう。

「よーし。着いたぞ」

 砂嵐はおさまり、視界が開けている。ここは何だろう?遺跡だろうか?石でできた、昔は建物だったと思われる建造物が立ち並び、町のような構造になっている。

 石は崩れ、今は誰も住めるような環境ではなさそうだが。中心には広場があり、広場を囲んで石段が積み上げられている場所もある。何かの会合に使っていたのだろうか。

「今日は休んで明日の昼から作戦会議だ。ボスには俺から報告しておく」

 この部隊の隊長だろうか?1匹のモンスターが話ながら広場の一角にある石を押すと、

ゴゴゴゴゴゴ…

 なんと大きな入口が出現した。盗賊のアジトは地下にあったのだ。

 巨体をのそのそ動かしながら、モンスターたちは入口へと入っていく。リーベルとジャン、ジェフの3人は顔を見合わせた。行くしかない。地下のアジトへと入っていった。

 中に入ると広い洞窟になっていた。モンスターが使っているだけあって高さも十分だ。いたるところに松明が掲げられており、地下なのに昼間のような明るさだ。

 隣を歩くモンスターが

「腹減ったな。メシにしようぜ」と言った。

 確かにお腹がすいていた。ちょうどいい。3人は無言でそのモンスターに付いていった。

 ひときわ広い空間に出た。食堂のような場所なのだろうか。そこでは多くのモンスターが地面に座り、話をしながら何かを食べている。

 隅に目をやると、肉や穀物が積み上げられていた。きっとキャラバンから奪った食料だ。

 前を歩くモンスターはけだるそうに積み上げられた食料の元へ行き、大きなお肉を3つ掴むとドカッと座り、食べ始めた。3人もいくらか穀物を取り、適当な場所に座った。

「ちくしょう。俺たちの食料を奪いやがって・・・」

 ジェフは悔しそうにしている。

「まあその分、ボスをぶっ倒して倍返しをしてやる。そのためには食うぜ!」

 むしゃむしゃ食べ始めた。切り替えが早い。

「おい、聞いたか?また出たらしいぞ?」

 モンスター同士の話が聞こえる。

「疾風だよ。例の。なんだお前?知らねえのか?仕事(盗賊)の最中に疾風のように現れて俺らの部隊を全滅させるやつだよ。あまりにもあっという間なのと、誰も帰って来ねえからどんなやつかもわからない。だから疾風って呼んでるのさ。そいつが3番隊を全滅させやがったんだと。信じられるか?おっかねえよな~。ついにボスはカンカンに怒って2番隊を疾風討伐に差し向けたらしいぞ。ん?なぜ1番隊じゃないかって?そりゃそうだろう。最強の1番隊が行っちまったら誰がボスの身を守るんだ?結構つええのに臆病なボスがそんなことするわけ・・・おっとっと。あぶねえ。今のはなかったことにしてくれ。何?自分の影が自分に向かって笑ったって?そんなことあるかよ。お前酔っぱらってたんだろう」

 疾風?誰だろう?いずれにしても、モンスターの敵のようだ。その時、別の場所から

「モンマルトル寺院を攻める日が決まったらしいぜ」

 聞き捨てならない話が聞こえてきた。モンマルトル寺院というのは「力の聖石」を守る「剣聖 ルーク」がいる場所だ。怪しまれぬよう視線は動かさず、話が聞こえてきた方向に耳を集中させる。

「四天王のヒュードラ様からロドリゲス様に指示があったらしい。昔年の敵、モンマルトルを合同で倒すと。いよいよ全面戦争だな。うちのボスにもヒュードラ様からの使者が来たらしいぞ」

 四天王って何だ?そして「知の聖石」を守る「砂漠の暴君 ロドリゲス」と「力の聖石」を守る「剣聖 ルーク」は敵同士で全面戦争が始まる?どうやら四天王のヒュードラとロドリゲスは仲間のようだが・・・

「で、モンマルトルを攻める前に邪魔なステイシアの町を攻めると。それが次の満月の翌日らしいぜ」

「!!!」

 一番聞き捨てならないことを言った。

「ロドリゲス様が留守の間にピラミッドを攻められないようにとのことらしい。まあ、ピラミッドへはボスが持っている【ログ・コンパス】がねえと誰も行けねえけどな。ん?疾風はボスが持つ【ログ・コンパス】を狙ってるんじゃないかって?ん~。そうかもな。でもボスは逃げ足が速えから、疾風でも追い付かねえんじゃないの?ガッハッハッ」

 重要なことをたくさん聞いた。頭を必死に整理するリーベル。

 にわかに立ち上がろうとするジェフの腕をつかんだ。首を横に振る。今あのモンスターを倒したところで意味はない。

 それどころか正体がばれて捕まってしまったら誰が町を守るというのだ。ジェフも頭ではわかっている。すぐに座って目を伏せた。3人は周りのモンスターに聞かれぬよう、小声で今後の動きについて打ち合わせをした。

 さっきの話はこうだ。

・盗賊団は正体不明の敵「疾風」と戦っている。隊を全滅させていることからすると凄腕なのだろう。

・盗賊団のボスは強いがおくびょうで逃げ足が速いらしい。

・自分の影が自分に向かって笑ったという話。酔っぱらっていたのか?

・「知の聖石」を守っている「砂漠の暴君 ロドリゲス」が四天王 ヒュードラと一緒に「剣聖 ルーク」のいるモンマルトル寺院を攻めるという話。敵同士なのだろうか?

・ここが一番大事な情報。モンマルトル寺院を攻める前にステイシアの町を攻めるつもりらしい。次の満月の翌日・・・ということは1週間後ということになる。絶対に止めなければ。

・ピラミッドに行くためには盗賊団のボスが持っている【ログ・コンパス】が必要。

 以上より、街を守るためにも「知の聖石」をゲットするためにも、まずは盗賊団のボスから【ログ・コンパス】を奪う。

 そして次の満月までに、すなわち1週間以内にピラミッドに潜入し「砂漠の暴君 ロドリゲス」を倒す、という作戦を立てた。

 もう今日は夜だ。明日、盗賊団のボスがどこにいるかを探ることにした。そろそろ寝よう。3人は立ち上がり、洞窟を適当に進むと

「おい!お前らの寝床はここじゃねえだろう。ん?どこか忘れたって?」

 細身で腕が4本生えたモンスターに呼び止められた。しっかり覆面を被っている。

「仕方ねえなあ。見せてみろ」

 リーベル・ジャン・ジェフの覆面の裏側を見る。裏にはそれぞれナンバーが書かれていた。

「お前とお前は14だからあっち。お前は18だからこっちだ。教えてやったんだから、今度いいお宝を見つけたら俺にくれよ?あっはっは」

 そう言って去っていった。ドキドキしたが・・・ばれなかった。リーベルとジェフが同じ場所。ジャンだけ離れてしまったが仕方ない。ばれるよりもましだ。

 1つ1つの寝床はアリの巣のように洞窟になっており、意外と広い。地下にこんなアジトを作るのは大変だったろうな、と余計なことを考えながらリーベルは腰を下ろした。隣でジェフが寝転んでいる。

すると

「うっうっう~。むりでちゅ、もうむりでちゅ・・・」

 すすり泣く小さな声が聞こえた。見ると黄色い色をした・・・うさもぐらんだ。マエミヤの町で倒したうさもぐらんの半分の大きさもないだろう。小さな体を震わせている。

「どうしたの?」

 リーベルが聞く。

「うっうっ。ぼっくんは盗賊をしたくないでちゅ。人間と仲良くしたいでちゅ・・・」

「・・・」

 いろんなモンスターがいるんだな。そう思ったが、今は何もしてあげられない。今日はいろんなことがありすぎて、なかなか眠くならなかった。

 トイレに行ってから横になろうと立ち上がったその時だった。

「くっくっくっ」

 どこだ?声がする。

「1人ずつ。1人ずつだ」

 周りを見渡す。声の主は見当たらない。いや・・・足元だ。足元の影が・・・ゆらゆら揺れている。

「ぽっちゃりした子供はもう捕まったぞ」

 ゆらり。松明の火で影がさらに揺れた。

「どうもおかしいと思ったのだ。人間のにおいがするからのう」

 信じられない。影が陽炎のように立ち上り、実体化していく。

「出たでちゅー」

 黄色いうさもぐらんがひっくり返った。

 リーベルは食堂で聞いた噂話を思い出した。これだ。酔っぱらっていたわけではなかったのだ。剣に手をかけて構えた。正体がばれてはまずい。周りに気づかれぬよう静かに、すぐに倒さなくては。

「こんなところに人間がいるはずがない。教えてもらうぞ。教えてもらうぞ。その理由を。ヒュードラ様の使者として、いい土産話ができそうだのう」

 また影が笑った。

四天王の使者 シャドシャド

 くっくっく。まさか盗賊団にネズミが潜入しておるとはのう。これだから使者はやめられん。うわさの「疾風」かと思ったが、まだ子供。そうではなさそうだ。しかし「疾風」の仲間かもしれん。お前たちが何者か、教えてもらうぞ。教えてもらうぞ。ん?あのぽっちゃり系の子供か?いまごと牢でしょんぼりしておるじゃろう。なかなかのやり手だったが、弓使いだったことが やつの不運。接近戦ではのう。心配するな。すぐに会わせてやる。牢屋でな。

ペンタコイン×3枚

①英語(TOEIC)や簿記などの資格や
 受験勉強、お子さんの漢字/計算
 学習など習慣づけしたいことを「
 1日30分」あるいは「1日30回」
 実施してください。
②1日できたらペンタコインを1枚ゲ
 ット。四天王の使者 シャドシャド
 は3枚持っているので3日実施出来
 たら勝利です。次のストーリーに
 進んでください。

四天王の使者 シャドシャドの紹介

四天王ヒュードラの部下。他人の影に潜むことができるので情報を扱う任務を得意とする。四天王ヒュードラは人の秘密やうわさ話を聞くことが大好きなので気に入られている。本当は人の影に潜むより、自分の足で歩く方が好き。趣味は日向ぼっこ。

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ABOUT ME
ねじ男爵
子供の頃の私と同じくゲーム好きの息子。小学校の漢字テストで驚愕の点数を叩き出す。ゲーム感覚で学習できたらと「ドラゴンスタディ」を考案しました。ストーリーを一緒に読み進めると楽しいらしく、点数は大幅UP(それだけ余地があったということ)。机に向かう習慣も付きました。興味を持った妻も「まあまあじゃない」と自分の医療系の資格勉強に利用してくれました。(平均)66日で習慣化します。1人でも多くの方が自分の目標を達成できるお手伝いができたら嬉しいです。